How to

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Dec 01, 2006 10:57

ウェブサイト「Tibetronica=チベトロニカ」を開設しました。みなさん、初めまして!モーリー・ロバートソンと申します。これからよろしくお願いします。

今回ポラロイド社からの協賛を得て、チベットまで行ってくることになりました。このサイトでは、チベット旅行の準備段階から、旅から生まれる作品の完成までをリアルタイム(実時間)の中でお見せします。

この「Tibetronica」は時間軸上の旅でもあります。ゼロの状態から徐々に創作を進めて行き、さまざまな実験と研究を行った後で、最終的な完成品(あるいは未完成品)が出現するまでの全過程に触れられるようにするのが、今回の狙いです。「チベット」で連想される紋切り型のイメージや意味合いにとらわれず、一個人としてチベットに向かって行くと、何が起こるのか?というアングルから実験を進めていきます。

準備段階として「内なるチベット」に旅しようと思います。自分の中に秘境があるのならば、まずそれを探し当てたいのです。

「人間の心と体の中には神秘的な力が宿る」という指摘は度々なされてきました。しかし、その人間の潜在力の一つを極端な形で結集した西洋科学が、私たち先進国に住む者の生活を快適で、かつ退屈なものへと作り替えてしまったことも事実です。皮肉なことですが、便利さの中に興奮や意外さ、躍動感を見いだすことは、だんだんと難しくなっていくようなのです。気が付けば、体も心もほとんど動かず、一日のほとんどをパソコンやテレビの画面に向かっていた…ということはないでしょうか?

インターネットの普及したここ10年ほどで、本当に目まぐるしい技術革新がもたらされ、ついて行くだけでも長時間パソコンに向かっていなくてはならないことも確かです。ですが今一度、ITの本当の力を試すべく、チベットという秘境にITを向けようと思います。

ぼくの自己紹介を手短に申します。もともとはミュージシャンですが、幼い頃からアメリカと日本を往ったり来たりした関係で、英語と日本語の両方で話したり考えたりしています。ラジオのパーソナリティーの仕事が広く認知されていますが、ここ1年はマスメディアの枠を外れたポッドキャスト活動でもリスナー層を広めてきました。

実験的な音楽を好み、自分でこれまで聴いたことの無いような音階や、調律そのものを離れた「音」を探し続けています。「実験的な音楽」というよりも「音楽による実験」と言った方が、自分の方法論に近いでしょう。1980年代からこのスタイルを貫いてきました。

ですが、一つのスタイルに沿って開発を続けてきた結果、自分の表現の幅が最近になって固定されてきたようにも感じています。たとえほんの一部の人間にしか受け止められない難解な作品群を作っていたとしても、アーチストが一定のルールの中から出てこなくなると、妙に大人びた安心感がつきまとうようになります。どこか淀んだような、止まったような「わかりやすさ」が生じた時に限って、にわかに受け入れられたりもするのです。世の中に認められることは大事ですが、その過程でアーチストが「慣れ」や「なれ合い」で地位を獲得するようになると、そのアーチストは一気に衰弱していくものだと思います。ちょうど便利な生活が体の筋肉を萎縮させたり、想像力を狭めたりするのと同じように。

そこで今回はまず、自分の中に「チベット」を探そう、と思い立ちました。自分の中のどこかにあるに違いない秘境。しかし、自分を自分に対して演じるのが上手になってしまったせいで、なかなか変わろうと思う心が続きません。本当の力を出さなくてもうまく行く日常生活に順応してしまっています。「秘境には行かなくてもいい」と言い返してくる深層心理の慢心を突破する必要があります。

この旅の第1歩として、内なる「配線替え=Rewiring」が必要だと感じています。それはどういうことか?これまでにいつしか同じ行動パターンの繰り返しとなっていた日常生活に、未知の刺激を持ち込もうと思います。自分の得意分野を故意に脱出して、「うまく行かない」分野にチャレンジし、体内の神経系や心理の構造に異変をもたらそうと思います。変身です。

パソコンの進化に付き合ってきたこの15年間を振り返ると、一番おざなりにしてきたのは自分の体であると言い切れます。ITや科学技術は身体機能をどんどんと延長していってくれます。最後は家から一歩も出なくてもホログラムなどを使って遠くの様子をすべて立体視したり、リモコンで遠くにある、人間より力の強いロボットを動かすことも出来るようになるでしょう。でも、その便利さに溺れてしまうと、気が付かない間に心と体が分解していってしまうような直感が働いています。与えられた様々なおもちゃを、それらが「メカニカルな権力」であるかのように振り回すことに夢中になるあまり、最後は自分の力で自分の体を動かせなくなる危険性すらあるでしょう。あるいは自分でものを考える力すら無くなっていくかも。

ITの通用しない行為にチャレンジしなくてはなりません。内なる秘境に入っていくための絶好の「パソコンではないツール」、それがヨガです。ヨガを始めました。

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